匠とは
ものに頼らない。
優れたバーテンダーは
品数、アイテム数に囚われない。
1種類のウイスキーしかなくても
お客様が来てくれるお店だってある。
かといってバーテンダーのキャラクターだけで
成り立つものでもない。
あるものでいかに楽しんで頂けるか。
バーに求められるのは総合力。
それができるのが匠かなと思います。
大阪府吹田市出身。大学卒業後、ホテルに就職し、ラウンジでサービスや
バーテンダーとして勤務。その後料理学校在学中に、サービスの先生から
元ホテルマンの経歴を買われ北新地のバーを紹介され、卒業後は数々の
有名店でバーテンダーとしての経験を積む。
北新地は堂島中通りに「BAR SAGITTA(サギッタ)」を構える酒の匠「矢田昌資」店主に
話を伺った。
矢田昌資氏にインタビュー
■バーテンダーになるきっかけ
高校大学時代は部活動でレスリングに没頭していました。
子供の頃から和食の板前になる夢があったんですが、
大学卒業してから料理人の道を進むには出遅れていると思い、
同じ飲食業界のホテルに就職して、サービスマンとして働くことにしました。
バーテンダーになったきっかけもそのホテルで、急遽バーテンダーが
足りないと言われて1週間突貫でレシピを叩き込んだのが始まりです。
時間を見つけてはフリスクのケースを使ってシェイクの練習をしていましたね。
実はシェイクよりグラスでマドラー回しするほうが難しいんです。
シェイクはリズム良く振れたら何とかなるんですが、
マドラー回しに時間を費やしました。
仕事が終わって2時間3時間氷と水を入れて回す練習が
2、3か月続いたこともありました。
■バーの楽しみ方
バー自体、敷居の高さを感じておられる方が多いですし、
SAGITTAは路面店ではなく、木の扉で中が見えないので、
更に入りにくいところがあると思います。
中に入ったら入ったで、暗いお店にこんなルックスの私が
いるもんですから、怖いと思われることが多いです。
でもね、緊張されずどうぞお越しください。
大丈夫です、私も存分に緊張していますので。
一見さんにおしぼりをお渡しするときは感謝の気持ちを込めて
「失礼ですが、根性ありますよね」
と言ってお渡しします。
始めは探り探りですが、数々の引き返すポイントを乗り越えて
お店までいらっしゃったお客様の気持ちに応えて
目一杯楽しんで頂きたいと思っています。
■こだわりについて
ローカウンターにこだわりました。
地に足が付いている感覚があり、肘掛けがあるので年配の人にも
楽に安全にお座り頂けます。
「回転数」という考え方はないですね。1日1人でもいいんです。
なるべくお時間の許す限り、ストレスやしんどいことを家に帰られる前に
お店でリセットして良い気持ちになってお帰り頂けたらなと思います。
私もバタバタするのは好きではないですから。
■北新地のバーテンダーとして
初めて北新地に来たときは衝撃の連続でした。
自分のやってきたことがままごとだったことに気付かされましたよ。
対面カウンターでお酒を作るのも初めてで
「おいしいよーっ」
て言われても全然お酒が進んでいない方がいて。
全く歯が立たない自分に笑うしかなかった。
その時はマスター、店長に助けてもらえましたが、もし一人だったら
二度とそのお客様には来てもらえなくなったでしょうね。
お客様には申し訳なくて、認められたいという気持ちがどんどん強くなりました。
営業後はもうひたすらお酒を作る作る作る。
他のお店へ行って飲んで飲んで。
バーテンダーが作っているのをじーっと見て。
同業者バレバレだったでしょうね。でも本当に必死でした。
今ではお客様の厳しい目が自分を育てて下さったと感謝しています。
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